
カブスのコレクションは、そのまま野球の歴史そのもの
Topps RIPPEDでは、お気に入りのチームをどう集めるかに注目した特集をお届けします。
コレクションを始めたばかりの方は、まず「チームコレクション入門」をチェックしてみてください。これは決定版のガイドというよりも、各球団を集める魅力や楽しさを、コレクターの方やこれから始めたい方に向けて紹介する参考プロフィール集です。
今週は、“風の街”シカゴのノースサイドへ――シカゴ・カブスのコレクションの魅力を探っていきます。
生涯楽しめるコレクションの世界
生涯にわたるカブスファンでありコレクターのジョン・ラカネリ氏は、その原点をこう振り返ります。「カブスは子どもの頃から大好きなチームで、1981年に叔母と一緒にリグレー・フィールドへ行ったんです。当時は球場でチームセットが売られていて、それを買って、スタンドでカードを眺めながら、実際にその選手たちが目の前のフィールドでプレーしているのを見る――あれはまさに魔法のような体験でした。」
現在、ラカネリ氏はまさに“カブス・スーパ―コレクター”と言える存在です。
1955年までさかのぼるチームセットを自ら組み上げてきた彼は、シカゴ周辺でカブスを集めることの魅力をこう語ります。
「地元でカブスを集めるのって、本当にコミュニティ感があるんですよ。毎年カブス・コンベンションにも参加していて、それがまた最高なんです」ラカネリ氏によると、コンベンションには現役からOBまで、フェルギー・ジェンキンスの時代までさかのぼる多くの選手が登場するとのこと。
そして、ジェンキンスに関してはこう語ります。「一番好きなカードは1969年のToppsだね。」

「シカゴ周辺にはたくさんのコレクターがいますけど、競い合うという感じじゃないんです」とラカネリ氏は言います。
「どちらかというと、『あのカード探してたよね? 今度のショーで手に入りそうなんだけど、興味ある?』って感じで、助け合いに近い雰囲気。それがまた、いいんですよね。」
シカゴ・カブスの究極カードたち
シカゴ・ホワイトストッキングスとして1870年に創設されたこの球団は、1903年に「カブス」の愛称へと切り替わりました。
メジャーリーグ最古の球団であることからもわかるように、野球史における最重要カードのいくつかがこのチームに関連しているのは当然のことです。ラカネリ氏によれば、代表的なものとしてT206、T205、ティンカーズ=エバース=チャンスのトリオ、そしてモルデカイ・ブラウンなどが挙げられます。

モルデカイ・ブラウンのT205カード(PSA 9、現存数:1枚)は、2019年に72,000ドルで落札されました。
一方で、SGC 2.5評価の同カードは、2022年にFanatics Collectで300ドルで取引されています。

T206のジョニー・エバースのカードは、ホビー全体の中でも最も象徴的な一枚として知られています。
バットを手にカブスのユニフォームを着たその姿は印象的で、1914年のナ・リーグMVPにふさわしい存在感を放っています。このカードのPSA 9評価品は2020年に6万ドル以上で落札されましたが、一方でPSA 2評価の個体は、Fanatics Collectで395ドルで出品されています。

「1920年代後半から1930年代初頭になると、ギャビー・ハートネットやキキ・カイラーの名前が出てきますね」とラカネリ氏。
「僕は個人的にハンク・ウィルソンの大ファンなんです。彼専用のバインダーもあるくらいで」と笑います。
なかでも彼のお気に入りは、1929年のKashinカード。このカードはPSA 7評価で、昨年1,000ドル以上で落札されています。

そしてもちろん、アーニー・バンクスの存在を忘れることはできません。彼は野球史の中でも最も愛された選手のひとりです。
彼の代名詞とも言える1954年のToppsカードは、まさに時代を超える名作。このカードのPSA 9評価品は、2022年に198,000ドルで落札されました。現在、上記のPSA 5評価・直筆サイン入り1954年版バンクスカードが、Fanatics Collectで10,000ドルで出品中です。

アーリー期のアーニー・バンクスカードで、より手に取りやすいものを探すなら、ラカネリ氏がおすすめするのが、1957年のToppsカード。「’57年版は本当に美しい。あれは芸術だよ」と彼は語ります。「セット全体もカード単体も、色彩も構図も素晴らしい。」バンクスのカードは種類も豊富で、ラカネリ氏によれば、コンディションが低めのものであれば、25〜50ドル程度でも見つけられるとのことです。

“好き”を集める、それがホビーの原点
ラカネリ氏は、お気に入りのカブスに関して何十ものチームセットを所有していますが、他の多くのチームコレクターと同様に、特定のチームや出来事が特別な年を際立たせることもあるといいます。なかでも彼が強調するのが、1984年のチーム。カブスが1945年以来初めてプレーオフ進出を果たした年です。「今見ても、彼らってすごく普通の人たちに見えるんですよね」とラカネリ氏は語ります。「あのチームは、カブスファンの心に本当に響く存在なんです。」
その年にナ・リーグMVPを受賞したライアン・サンドバーグは、今なお“風の街”シカゴの歴史において、最も愛されたアスリートの一人として知られています。彼のルーキーカード(PSA 9評価)は、現在Fanatics Collectで149ドルで出品中です。

チームコレクションの最大の魅力のひとつは、何といっても“ノスタルジア”でしょう。
あのチーム、あの瞬間、あの夏の記憶をカードという形で手元に残す──それは、永遠にその一部を持ち続けるということなのです。
ついに掴んだ、ワールドシリーズ制覇
カブスが再び頂点に立つまでに、実に108年の歳月を要しました。
その悲願を成し遂げた2016年のチームは、カブスのチームコレクターにとって特別な存在です。もちろん、2015年ナ・リーグ新人王&2016年MVPのクリス・ブライアント、個性派エースのジェイク・アリエータ、主砲アンソニー・リゾ、そしてオールスター出場経験を持つアディソン・ラッセル、デクスター・ファウラー、さらにジョン・レスター、カイル・ヘンドリックスなど、錚々たるメンバーが名を連ねています。

「カイル・シュワーバーが大好きなんです」とラカネリ氏は語ります。「あの年の彼のストーリーが本当に最高で。 ケガからの復帰に向けて必死にリハビリしていて、少しずつ状態が上がってるって噂が出てきたかと思ったら、突然“ワールドシリーズに出場する”って発表されたんですよ。
あれは本当にクレイジーでしたね。」シュワーバーはワールドシリーズで打率.412を記録し、カブスの長年のタイトル渇望に終止符を打つ原動力となりました。
前途は青空 ――カブスの未来へ
カブスは2020年を最後にポストシーズンから遠ざかっていますが、ノースサイドには明るい未来が広がっています。ヒューストンから加入したスーパースター、カイル・タッカーは好調なスタートを切り、チームはナ・リーグ中地区の首位を走っています。ホビーの世界でも、ピート・クロウ=アームストロングやマット・ショウといった若手選手が、注目のコレクション対象として人気を高めつつあります。

カブスはロサンゼルス・ドジャースとともに、2025年シーズン開幕戦として東京で行われた歴史的な2連戦に出場しました。この試合を記念した「2025 Topps Baseball Series 1 MLB ワールドツアー 東京シリーズ」カードは、ホビー界でも今、最も注目を集めている最新リリースのひとつです。
カブスにまつわる縁
カブスは、アメリカのスポーツ界における象徴的存在です。地元シカゴではもちろん敬愛されており、今や全米的なブランドとしても確立されています。ラカネリ氏にとっては、ホビーの世界がSNSを通じて広がったことにより、自身のチームコレクションを披露する機会も増えたといいます。
「カブスがある種“全国区のチーム”っていうのは、うれしいですね」とラカネリ氏は話します。「たとえばTwitterやBlue Skyで投稿すると、全米のいろんな人たちが『このコレクション、本当にすごいね』って言ってくれるんです。シカゴ出身じゃなくても、その価値をわかってくれる人がいるっていうのは、やっぱりうれしいし楽しいですね。」